13-2. 捕食者なき世界

  ユーラシア大陸の東から西まで1600万人もの子孫がいる、世界最大の家系だそうです。Y-DNA「C3c」です。日本には「C3a」が存在します。 寒冷地適応する前の「C」はオーストラロイドだったはずですが、適応後はモンゴロイドの語源どおり肌の色が薄くなり、 一重まぶたフラットフェースのいわゆるモンゴロイドに大変貌しました.....のはずです。

  数年前に、アメリカのイエローストーン公園でオオカミを導入し生態系を復活させることで、木々や草花の緑も復活した、 という新聞記事がありました。本書は2010年9月に科学ジャーナリスト、ウィリアム・ソウルゼンバーグによって書かれた、 生態系の頂点に立つ捕食者(ここではオオカミ)をアメリカ人が絶滅させることで北アメリカ大陸の自然がどのように壊れていったか、 木々や草花の緑が失われていったか、そして復活させるために研究者たちが武器業者、民衆、マスコミや政府と闘いながら地道に 啓蒙活動を行いとうとうオオカミをイエローストーン公園に再度放つことに成功し、生態系が再び復活し木々や草花を食いつくす 草食獣の異常増殖が食い止められ、結果緑も回復しつつあることを詳細に紹介している。

  陸上だけでなく沿岸部の大陸棚でもラッコの乱獲で生態系が崩れ、ウニが昆布を食べつくし生態系が壊滅しかけたが、 再びラッコを導入することでウニの異常増殖が食い止められ、昆布も育ち再び自然な沿岸棚が育ってきたそうです。

  人類がオオカミやハイイログマなど、危害に会う大型肉食捕食者を絶滅に追い込んだ理由は、まだサルであった時代の食べられる 側だった数百万年前から心に植え付けられている「恐怖心」であったと説明している。

  人類の軌跡は11章の「孤独な捕食者」に書かれている。200万年前頃アウストラロピテクス(猿人)は聖地だった更新世の森林が縮小し 草原地帯が拡大していった時代に、必要に迫られやむを得ず樹上から降りて草原に、「想像するちから」風にいえば、後ろ手で立ったのです。 (アウストラロピテクス=猿人とチンパンジーの分岐は「破壊する創造者」では400万年前頃、「想像するちから」では500万年前頃と されています)。樹上から降りたとたんに人類の祖先は、肉食捕食獣から逃げ回らなければならなくなった。そして逃げ回るために よりしっかり立つために「後ろ手」が「足」に進化したのです。勿論その代わり樹に素早く上る能力を捨てたのです。 何故樹上に素早く逃げる能力を捨てたのか、それは本書の著者は、生き抜くための胆力と知恵があったから、再び樹上に逃げる必要が なくなったからだと説明している。

  それまで食べられる側だった草食のヒトの祖先は捕食獣の狩のやり方を学ぶ能力を身につけ、樹上の草食者から150cm程度の身長の 草原に立つ猿人という肉食者に大転換を行ったようなのです。獰猛な捕食獣と闘いながら、食料を得るために、かつ食料にされないための 闘いをしながら脳は発達し新参捕食者としての地位を確立させたようです。二本足で歩行する初の捕食者=肉食者に大転換する過程で 脳が画期的に大きくなって行ったようです。また獲物が取れない時には死肉をあさることで肉食に徹する生き方を選んだのです。 人類が肉を食べるのは(サルから人類に進化した要因なので)人間であるそのためなのです。ということはベジタリアンは人間であることを 否定していることに等しいのかもしれません。

  倒した獲物や見つけた死肉を素早く独占し解体し隠すには作業を分担できる大家族が向いている、また近づく敵を素早く 察知するためにはやはり大家族の多数の目が必要です、このため人類は家族集団を形成することを覚え、情報を瞬時に共有するために 「言語」を発することを覚えたそうです。「想像するちから」風に言えば、その頃の人類の脳は、言語を習得し、サル時代の身体能力も 全て維持するキャパシティを持っていなかったため、身体能力を捨てて言語を選択せざるを得なかったそうです。

  そして樹上で暮らす能力を捨ててまで獲得したもう一つの能力が、「二本足長距離歩行」だそうです。現在でもコイサン族の人達は 獲物が力尽きて倒れるまで追いかけ追い詰める「追跡」能力を持っていますが、その追跡能力(長距離ランナー能力)は猿人時代に はぐくまれホモサピエンスになり完成したようです。この二本「脚」は人類が優秀なハンターつまり捕食者になるための必須の能力だった ようです。石や骨で作ったこん棒などの簡単な武器を持ち、動物をとことん追い詰めるのが人類の「狩り」だったようです。

  結局、樹から降りて草食獣から肉食者に大転換したことで、チンパンジーと全く違う動物に我々は進化したのだそうです。 サア!肉を食べよう!

  そして追跡能力=長距離ランナー=マラソンマンの能力が人類の基本的能力であることが解りました。マラソン好きは人類本来の 本能かもしれません。 サア!走ろう!でも無理だ、じゃあ1日1万歩は歩こう!

  一方、アウストラロピテクスの子供の遺骨をみるとクマタカなどの猛禽類に食べられた典型的な跡が残っているそうです。 人類の祖先はライオン、ヒョウ、ハイエナ、サーベルタイガー、ワイルドドッグなどの肉食獣だけでなく肉食の猛禽類とも闘いながら 生き残ってきたのです。太古から追跡し追跡される生活を続けてきたことが、人類の心と体に消えることのない「恐怖心」という 烙印を押したのだそうです。そのため、北米大陸ではオオカミが絶滅させられ、人類の居住地域ではヒトと捕食獣が遭遇することは 滅多になくなり、ヒトは食われる心配をせずに生きられるようになったが、生態系の頂点に立つ捕食者を排除したせいで、 生態系を狂わせ破壊するという結果を生んだのです。

  人類は生態系を操作できる特別な存在になってしまっています。つまり自然を破壊することができる能力を身につけるという 進化を遂げてしまったのです。まさしく自分たちだけが世界を支配する「利己的な遺伝子」に成り下がってしまったのです。 リチャード・ドーキンスの言うように遺伝子自身がそれを欲したのでしょうか?利己的な遺伝子が生態系(地球環境)を破壊する という許可を地球と言う天体から得たとは思いたくはありません。昔の偉い哲学者は「我思う故に我有り」と、人間が人間として 存在する理由を言いましたが、それも遺伝子がそのように発言させたのでしょうか?すごく思いあがった考え方だと今は思います (欧米人の発想なのかな?)

  しかしそうは言いながらも、人間は子孫を残し遺伝子を脈々と伝えることや「家=遺伝子」を守ることなどが与えられた仕事 であることも間違いありません。その部分は確かに「利己的な遺伝子」が仕組んだことなのかもしれませんね。ジンギスカンが 大量の子供たちを残し、子供たちに対し大量の子孫を残すように指示遺言し、結果ユーラシア大陸東西に渡り1600万人もの Y-DNA「C3c」遺伝子をバラまいたのも、その際にユーラシア大陸の各地にイル汗国などの汗国を作らせ、その土地の住民になりきり、 遺伝子を徹底的にその土地に根付かせたのも、「利己的な遺伝子」自身がジンギスカンの遺伝子は残すべき遺伝子であると 自己判断をしてそのように仕向けたと言うなら何となく納得できそうな気がします。「利己的な遺伝子」とは恐ろしい!


以上
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13-4. 想像するちから

   「破壊する創造者」の次に読んでいるのが「想像するちから」です。著者は京都大学霊長類研究所長の松沢哲郎さんです。 チンパンジーを研究することで人類とは何かを改めてと問い直すきっかけになるかもしれない本です。霊長類研究所と言えば、 昔、今西錦司さんの本を片っ端から読んだものでした。還暦を迎えたという松沢さんは今西さんのかなり後輩にあたります。 小生よりも若い世代です。

  霊長類ヒト科には4属あって、ホモ属(ヒト属)、パン属(チンパンジ−属)、ゴリラ属とオランウータン属が含まれるそうです。ところが日本の法律では既にチンパンジーはヒト科として分類されているそうです。つまり動物愛護法にはヒト科チンパンジーと書かれているそうです。チンパンジーとヒトの分岐は松沢説では下図のように500万年前頃らしい。














  ヒトとチンパンジーの全遺伝情報(ゲノム)の違いは1.2%程度だそうです。アカゲザルとの違いは6.5%もあるそうです。 つまりチンパンジーはサルではなくあくまで断然ヒトに近いのです。イネの全遺伝情報はなんとヒトと40%も同じなのだそうです。 この意味するところは?まだ理解できていませんが、とにかくヒトとチンパンジーは遺伝子的にほとんど同じ(98.8%)仲間なのだが、 何故こんなに違うのか?

「破壊する創造者」風に言えば、

・樹上から草原に降りたことにより、

 1) ウイルスとの共生発生の違い
 2) エピジェネティクスの違い。

  が生じました。森林と草原では環境がかなり異なるため、新しいエピジェネティックな影
  響を大きく受け、草原に存在するウイルスの種類も森林とは当然異なったのでしょう
  それがチンパンジーとヒトの進化の大きな違いを生んだのでしょう。

・出アフリカしたことにより、

  1) ウイルスとの共生発生の違い
  3)-1 亜種であるネアンデルタール人との亜種間交配が起きた。
  3)-2 異なるDNAハプロタイプ間の異遺伝子タイプ間交配が起きた。

  のが、次の進化の要因のはずです。

  樹上から降りて草原に立ちサバンナの大地で発展をした現代人類は、過酷な環境に変わってしまったアフリカ大地から、絶滅危惧種に陥りながらも出アフリカし、ユーラシア大陸へ逃げたことで全く新しいウイルスや環境に出会い、チンパンジーとは全く異なった進化の因子を受けたことによるのです。森林に留まったチンパンジーは新しい進化の因子に出会うことがなかったため、そのまま別の現代人類に進化することができなかったのです。

  人類に進化した現代人でも同じことが起きたと思われます。一部の集団が出アフリカを選ばず、森林に再度逃げ込むことで絶滅を免れました(コイサン族やピグミー族の先祖)が、その後チンパンジー同様新しい進化の因子を受けなかったため、5万年前のままそのまま時間が止まってしまったことがコイサン族などが現代人のオリジナルの姿をとどめている理由だと考えられます。

 「破壊する創造者」的には、環境が変わるということは、

 ・新しいウイルスに出会う  ・新しい土地にあった新しい生活スタイルに変わる(新しいエピジェネティクスに出会う)   ということです。

  勿論現代人類にとっては中東でのネアンデルタール人との出会いと交配は大きな出来事だったはずですが、もしかすると次のように極く自然な出来事だったのかもしれません。

  「破壊する創造者」では、ヒトとチンパンジーが分岐したのは700万年ぐらい前で630万年前頃に完全に分岐したと書いており、しかも過渡期の70万年間は互いに交配ができて遺伝子の交換が行われていたらしい。と書いている。つまりそれほどチンパンジーとヒトは近い仲間だった、と言うことです。ある日突然チンパンジーとヒトに分化したのではなく、70万年もかけて交配が続きながら共通の祖先からやっと分化・分岐したのです。

  ヒトは樹から降りて草原に立つことでチンパンジーとは別の進化を始めたのですが、立ったために前足が「手」に変化したと思っていたら、実は逆なのだそうです。霊長類は昔は「四手類」と呼ばれていたそうです、つまり霊長類のみが手が4本あるからだそうです。ところが霊長類の歩きは「後輪駆動」タイプでもともと後ろの手が地面を蹴って進むのだそうです。そしてヒトは樹から降りて直立後ろ手歩行を始めたため、後ろの「手」が物を掴む必要のない「足」に変化をし、直立二足歩行が完成された、そうです。アウストラロピテクスは頭蓋骨化石の特徴から完全直立二足歩行をしていたことが解っているため、紛れもなくヒトなのだそうです。ではアウストラロピテクス(猿人)とホモ属(ヒト属)との違いは何か?それが石器の製作でホモ属の化石には必ず石器が一緒に出て来るのだそうです。

  チンパンジーとアウストラロピテクス・アファレンシスの脳は400mlぐらいだそうですが、ホモ・ハビリスになると800mlに増え、現代人類では1200mlに増大しています、つまり猿人と現代人の間で脳の大きさ2倍になり更に3倍に発達したのです。しかしだから石器が開発できた、という訳ではなく、あくまで偶然の産物なのだそうです。

  さてチンパンジーがヒトに圧倒的に勝るのが直感像記憶だそうです、アフリカでは生き残るために、一瞬見えた動くもの、一瞬聞こえた物音が敵か仲間か瞬時に判別する必要があるためであるらしい。しかしどんなに直感像記憶が優れていても、その体験を他者と共有するためには伝える必要があります。そのため人類が「直感像記憶能力」を失っても手に入れたものが「言語」であるそうです。では何故、直感像記憶力を失うことになったのか、それは簡単な理由らしい、つまり脳の容量が決まっていたからだそうだ。結局、2つの能力を同時には持てず、直感像記憶力を捨てて言語を選んだのだそうです。よく脳科学番組で一瞬見たものを記憶するゲームがあるが、全く無意味なことなのだ。記憶できる必要はないのだ、捨てた能力なのだから。ヒトが失ったものは他にもあるそうです、嗅覚や運動能力だそうです。かといって運動音痴の人の方が進化している、とは書いてはありませんが...。ホモ属が出現した250万年前頃、脳が400mlから800mlに一気に増えた頃に直感像記憶力や嗅覚など、本来持っていた能力を失い、代わりに言語を獲得したのだそうです。

  いよいよ本題ですが、もうひとつチンパンジーとヒトの大きな違いは「想像する」という能力だそうです。チンパンジーは「今、この世界に生きている」ため、将来や未来を想像する能力を備えていないそうです。これは長い間の日本やアフリカ大地のチンパンジーファミリーとの生活・観察で解明できたことだそうです。

  つまり刹那的に、今が良ければ良い、と言う生き方の人はチンパンジーの脳のまま止まってしまい進化していない、ということになります。チンパンジーを長いこと観察し、またあの有名なチンパンジーの「アイ」など3世代14人*のチンパンジーと生活を共にしてきた研究者がたどり着いた結論なので重みがあります。(*14匹ではありません、ヒト科なので14人なのです)

  そして著者の結論は;

  人間とは何か? それは「想像するちから」。想像する力を駆使して、希望を持てるのが人間、なのだそうです。人間である以上、想像力を働かして物事に対処し将来のために行動する、ことが「自然」のことなのです。当然ですが「絶望」も人間だけが持つ特性だそうです。

  東日本大震災に遭われた方々の絶望感は想像するに余りありますが、それでも未来を見据えて復興後を夢見て明日に向かえるのが人間なのでしょう。勿論日本人全員の支援が必要です。

  
以上
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