17-8. ホモサピエンスY-DNAの出現時期が更に古く34万年前になるらしい!?

  The American Journal of Human Genetics 92, 454?459, March 7, 2013に、ホモサピエンスのY-DNAの分化時期が飛躍的に遡ると言う論文が出ました。 Y-DNAが対象なのでmtDNAには触れていません。何が問題か、と言うとこれまでの研究報告はY-DNA Adamが現れる時期よりもミトコンドリアEveが出現する時期の方が常に古く、 ホモサピエンスへの進化は先ず女性に生じ徐々に進化型の頻度が高まり男性も進化するというストーリーでした。

  このY-DNAの出現がこれまでの最新報告だったCruciani et al.の200000年前から一気に95%の信頼度で338000年前に遡ってしまったのです。 あまりにあまりなので暫くホームページでご紹介するのをためらっていました。

  この年代試算は新しい事実が出た、という訳ではなく年代試算に使う突然変異速度(Mutation Rate)が違うようなのです。Cruciani等が用いた高い突然変異速度より遅い突然変異速度が採用されたようです。 従って同じ変異が起るためには遅い変異速度の方が古い年代が計算されるのです。

  この変異速度が妥当なものかは当ガラパゴス史観にはわかりませんが、研究者は研究者なりの考え方でそれぞれRateを採用し、 学術誌の審査委員がそのRateを学問的に妥当と認めたから論文を採用したのでしょう。

  当ガラパゴス史観が本論文をご紹介することにしたのは、本論文の共同執筆者にKarafetHammerというこの分野の重鎮2名が名を連ねているからです。 Abstractをご紹介しますので興味のある方は原著をどうぞ。

  なおmtDNA/ミトコンドリアEveの年代もMutation Rateを遅くすれば当然出現年代は古くなります、従って現時点では進化は女性から起るというストーリーは変更する必要はありません。 つまり、猿人、原人、ネアンデルタール人も含めMutation Rateの再検討を行えば人類発祥の絶対年代が修正される可能性もありますが相対的な新旧は変わらないと思います。
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An African American Paternal Lineage Adds an Extremely Ancient Root to the Human Y Chromosome Phylogenetic Tree

The American Journal of Human Genetics 92, 454?459, March 7, 2013

Fernando L. Mendez, Thomas Krahn, Bonnie Schrack, Astrid-Maria Krahn, Krishna R. Veeramah, August E. Woerner, Forka Leypey Mathew Fomine, Neil Bradman, Mark G. Thomas, Tatiana M. Karafet, and Michael F. Hammer

Abstract

We report the discovery of an African American Y chromosome that carries the ancestral state of all SNPs that defined the basal portion of the Y chromosome phylogenetic tree. We sequenced ~240 kb of this chromosome to identify private, derived mutations on this lineage, which we named A00.We then estimated the time to the most recent common ancestor (TMRCA) for the Y tree as 338 thousand years ago (kya) (95% confidence interval ? 237?581 kya). Remarkably, this exceeds current estimates of the mtDNATMRCA, as well as those of the age of the oldest anatomically modern human fossils. The extremely ancient age combined with the rarity of the A00 lineage, which we also find at very low frequency in central Africa, point to the importance of considering more complex models for the origin of Y chromosome diversity. These models include ancient population structure and the possibility of archaic introgression of Y chromosomes into anatomically modern humans. The A00 lineage was discovered in a large database of consumer samples of African Americans and has not been identified in traditional hunter-gatherer populations from sub-Saharan Africa. This underscores how the stochastic nature of the genealogical process can affect inference from a single locus and warrants caution during the interpretation of the geographic location of divergent branches of the Y chromosome phylogenetic tree for the elucidation of human origins.


























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  概要

  "私たちは、Y染色体系統樹の基礎の部分を定義したすべてのSNPの祖先の状態を伝えるアフリカ系アメリカ人のY染色体の発見を報告します。 "

  この血統の上で個人的な、派生突然変異を確認するために、我々はこの染色体の~ 240kbを配列しました。そして、それに我々はA00という名前をつけました。 Y-DNAツリーの最も最近の共通祖先(TMRCA=Y-DNA Adam)の年代を試算したところ、33万8000年前(95%の信頼間隔で237〜581 kya)となった。

  これは、解剖学的に最も古い現代人の化石の年代と同様にmtDNATMRCAの現在の試算を著しく超過します。

  私たちが非常に低い頻度で発見した非常に古い年代の希少なA00血統と結合したことはY染色体多様性の起源のより複雑なモデルを考慮する重要性を指摘します。

  これらのモデルは、古代の人口構造および解剖学的な近代人の中へのY染色体の古い遺伝質浸透の可能性を含んでいます。

  "A00血統はアフリカ系アメリカ人の消費者サンプルの大きなデータベースの中で発見され、サハラ以南のアフリカの伝統的な狩猟採集民集団の中では識別されていません。 "

  人間の起源の説明のためのY染色体系統発生のツリーの互いに異なる枝の地理的な位置の解釈の中で単一の場所と根拠から 系統的なプロセスの確率的な性質がどのように推論に影響を及ぼすことができるかについて、これは強調します。
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  上図の簡単な説明:Y-DNA Adamの分化時期が33.8万年前頃(Crucianiは20.9万年前頃)、コイサン族等のY-DNA「A0」の亜型分化が20.2万年前頃(Crucianiha12.5万年前頃)です。 Y-DNAの亜型「A00」と「A0」は記事1-1のツリーで確認してください。Mboはカメルーン、コンゴなど中央アフリカ一帯のバンツー語族の中のMbo語を話す集団です。 17000前頃に亜型分化したようです。恐らくY-DNA「E」の南下によりY-DNA「A」との交配が進んだ結果でしょう。Y-DNA「E」はほぼ全アフリカのネイティヴ・アフリカンに認められるほど、 中東でY-DNA「D」と分離後、中東から戻りアフリカしその後一気に全アフリカに拡散したようです。

  この報告はまだそれほど大きな反響を呼んではいないようです。 近年の分子時計の年代見直しで遺伝子の変異時間(Mutation Rate)が機器分析を駆使し編年作業が飛躍的に進んだ考古学の年代に合わせる作業が進んでいて、 ミトコンドリアEveやY-DNA Adamの出現時期がそれぞれ20万年前と14万年前により古く修正されたばかりでした。 上図では今回採用されたMutation Rateによる分化時期(黒数字)とCruciani et al.によるこれまでの年代(灰色数字)が併記されています。 この論文では、Cruciani達が採用したMutation Rateは早く、もう少し遅いのではと考えているようですが、論文の審査員達は遅いRateの意味と学問的な正当性を認めたようです。 これからこのMutation Rateの問題はこの分野で大きな研究課題になってくると思います。何故Rateが研究者によって変わるのかは、Y-DNA Adamと直接関連付けられる考古学的な遺物がわからないからです。 多くの考古学者達はアウストラロピテクスのようなそもそも人類の発祥・起源には大いなる使命を持ち過酷なアフリカ大地で発掘を進めるのですが、ホモサピエンスの発祥はそれほど大きな研究テーマではないのでしょう。 我々普通の現代人から見ると遠すぎるご先祖のアウストラロピテクスより直接自分達に関わるホモサピエンスや日本人の発祥・起源の方が大事です。

  ともかく、ホモサピエンス男子の発祥が約34万年前としても、最新の研究で60万年前頃に出アフリカしたと考えられるようになりつつあるネアンデルタール人がアフリカから出て行ったあと、 ホモサピエンスはその後26万年近く原人のままアフリカ大地に取り残された進化遅れの人類と言うことになります。が、本当にそう考えればいいのでしょうか?  出アフリカしなかった猿人に対し、原人も旧人も新人も全て出アフリカを決行しているのです。そして原人の遺跡も旧人の遺跡もアフリカ大地からはあまり報告されてはいません。 サハラが砂漠化してしまっためとサハラ以南はジャングルのためいずれにせよ遺跡の発掘は極めて困難だからなのです。従って出アフリカした先輩人類の遺跡がアフリカ以外でのみ発掘されるのです。 もしかするとホモサピエンスは原人から進化したのではなく、アフリカに留まった旧人から進化した可能性だってあります。

  もう一点、重要なことはY-DNA「A00」という子亜型はアフリカからはまだ発見されていないと言うことです。「A00」は中央アフリカ付近から 奴隷として北米に連れてこられたネイティヴ・アフリカンの子孫から見つかった、ということですので中央アフリカ付近の精緻なY-DNA調査を行えば今後発見されることは充分にあり得ます。



以上

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