15-28. 古代に移動したDNA−縄文人の先祖の移動も見えてくる!?

 2016年10月13日のNatureに、掲載された3論文と1レターを併せたカバー・ストーリーが表紙を飾りました。 カバー・タイトルは「The DNA of Ancient migrations」「古代に移動したDNA」です。

  内容の概要は、パプア・ニューギニア人、オーストラリア・アボリジニとアンダマン諸島のOnge族はホモサピエンスの出アフリカ後、 我々出アフリカ組ホモサピエンスと同じ先祖から分かれた、というY-DNA分析ではすでに明らかになっていることが、 常染色体の分析でも同じ結果になった、というものです。しかもパプア・ニューギニア人とオーストラリア・アボリジニには、 5%ものデニソワ人の遺伝子が受け継がれているという内容で(しかしアンダマン諸島のOnge族には含まれていない。)、 ホモサピエンスの初期移動の50000年前ごろには既にサフール大陸に到達したことが分かっているパプア・ニューギニア人、 オーストラリア・アボリジニのみが移動の途中でデニソワ人と異種間もしくは亜種間交配を行い、 その後の海面上昇でサフール大陸が分離した後にスンダ列島に移動してきた 新しい遺伝子集団からはデニソワ遺伝子が見つかっていない、ということだそうです。

  この論文情報が何故重要かというのは極めて明快で、我々日本人の精神風土を形成する縄文文化を築き上げた Y-DNA「D2」とY-DNA「C1a」/「C3a」の移動がわかり、なぜ日本人は周辺アジア諸国と精神風土が全く異なるのか、 日本語は何故孤立言語なのかなど様々な日本独特の特異性に関する 疑問を呈してきた当ガラパゴス史観が常染色体研究でも裏付けられるからです。

では、以下にカバー・ストーリーと3論文のAbstractを転記します。グローバルな調査研究のため著者名と組織名はあまりにも多いので省略します。 また今回は特に文章が難しくぎこちない翻訳ですが、ぜひご自分で訳してみてください。あとは原著をお読みください。
========================================
Volume 538 Number 7624 Cover Story

  "Three international collaborations reporting in this issue of Nature describe 787 high-quality genomes from individuals from geographically diverse populations. David Reich and colleagues analysed whole-genome sequences of 300 individuals from 142 populations. Their findings include an accelerated estimated rate of accumulation of mutations in non-Africans compared to Africans since divergence, and that indigenous Australians, New Guineans and Andamanese do not derive substantial ancestry from an early dispersal of modern humans but from the same source as that of other non-Africans. Eske Willerlsev and colleagues obtained whole-genome data for 83 Aboriginal Australians and 25 Papuans from the New Guinea Highlands. They estimate that Aboriginal Australians and Papuans diverged from Eurasian populations 51,000?72,000 years ago, following a single out-of-Africa dispersal. Luca Pagani et al. report on a dataset of 483 high-coverage human genomes from 148 populations worldwide, including 379 new genomes from 125 populations. Their analyses support the model by which all non-African populations derive most of their genetic ancestry from a single recent migration out of Africa, although a Papuan contribution suggests a trace of an earlier human expansion."


  今週号では3つの国際共同研究チームが、地理的に異なる多様な集団に属する個人から得られた計787例の高品質ゲノムについて報告している。 D Reichたちは、142集団に由来する300人の全ゲノム塩基配列の解析を行い、非アフリカ人はアフリカ人との分岐後に、 アフリカ人に比べて変異蓄積速度が加速したと推定されること、またオーストラリア先住民、ニューギニア人、アンダマン諸島人の 実質的な祖先は、現生人類の初期の分散に由来せず、他の非アフリカ人と同じ起源を持つと考えられることを明らかにしている。 E Willerslevたちは、オーストラリアの先住民であるアボリジニー83人およびニューギニア島の先住民であるパプア高地人25人の 全ゲノム塩基配列データを得て、オーストラリア・アボリジニとパプア人は、単一の出アフリカ分散事象の後、 7万2000〜5万1000年前にユーラシア人集団から分岐したと推定している。 一方、L Paganiたちは、世界各地の125の集団に属する483人から得た高カバー率のヒトゲノムデータセットを報告しており、 その中には125の集団に由来する379例の新規ゲノムが含まれている。Paganiたちの分析結果は、全ての非アフリカ人集団は、 その遺伝的祖先の大部分が最近起こった単一の出アフリカ分散事象に由来するという モデルを裏付けているが、パプア人にはそれ以前の人類の広がりの痕跡が見られることを示している。
========================================
Nature Volume:538, Pages:207-214 Date published:(13 October 2016) DOI:doi:10.1038/nature18299
「A genomic history of Aboriginal Australia」

Abstract
  "The population history of Aboriginal Australians remains largely uncharacterized. Here we generate high-coverage genomes for 83 Aboriginal Australians (speakers of Pama?Nyungan languages) and 25 Papuans from the New Guinea Highlands. We find that Papuan and Aboriginal Australian ancestors diversified 25?40 thousand years ago (kya), suggesting pre-Holocene population structure in the ancient continent of Sahul (Australia, New Guinea and Tasmania). However, all of the studied Aboriginal Australians descend from a single founding population that differentiated ~10?32 kya. We infer a population expansion in northeast Australia during the Holocene epoch (past 10,000 years) associated with limited gene flow from this region to the rest of Australia, consistent with the spread of the Pama?Nyungan languages. We estimate that Aboriginal Australians and Papuans diverged from Eurasians 51?72 kya, following a single out-of-Africa dispersal, and subsequently admixed with archaic populations. Finally, we report evidence of selection in Aboriginal Australians potentially associated with living in the desert. "


  "オーストラリアのアボリジニの住民の歴史は、ほとんど不明のままです。" "ここでは、我々はPama?Nyungan言語を話す83人のオーストラリア・アボリジニとニューギニア高地の25人のパプア人族の 良質なゲノムを調整しました。 " "パプア人とオーストラリア・アボリジニの祖先が2万5000年〜4万年前ごろに分化したことが分かりました。そして、古代のSahul大陸 (オーストラリア、ニューギニアとタスマニアが分離する前の大陸)の前完新世の人口構造を提案します。 " しかし、研究されたオーストラリア・アボリジニは全員、10000〜32000年前頃の単独の集団の出身でした。 我々は限られた遺伝子拡散と関連した完新世の時代(過去10000年)の間に、北東のオーストラリア地域から残りの オーストラリア全域に至る人口拡散を推論します。そして、それはPama-Nyungan言語の広がりと一致しています。 オーストラリア・アボリジニとパプア人が、出アフリカ後に続く先輩人類(ネアンデルタール人)との交配の結果、 ユーラシア人から5万1000〜7万2000年前ごろに分化したと我々は試算しました。 最後に我々は、砂漠に生きてきたことと恐らく関連しているオーストラリア・アボリジニの中で働いた選択の証拠を報告します。

  この論文で重要なことは上図で、
・アボリジニ(及びニューギニア人)が出アフリカ組から分化したのが57000〜58000年前
 頃だろう。
・ホモサピエンスは60000年前頃と51000年前頃の、過去に2回ほどネアンデルタール人と大
 きな交配を経験している。
  ・・60000年前頃の恐らく中近東での交配で出アフリカ組Y-DNA「CT」は、YAP系
    Y-DNA「DE」と非YAP系「CF」に分離したようだ。
  ・・51000年前ごろの恐らくインド亜大陸での交配で非YAP系Y-DNA「CF」が
    古代遺伝子Y-DNA「C」と「F」に分化し、
    YAP系Y-DNA「DE」は古代遺伝子Y-DNA「D」と「E」に分化しただろう。
  ・・その後「D」はチベット人と縄文人になり、「E」は地中海(ラテン)系とアフリカ系
    になり、
  ・・一方「F」はインド亜大陸で大いに分化し、世界の全ての新興遺伝子の親遺伝子に
    なった。
・Y-DNA「C」は44000年前頃にデニソワ人と交配し、Y-DNA「C1a」と旧「C2」と「C4」
 及び旧「C3」に分化したようだ。
  ・・その後
    「C1a」は日本列島に到達し港川人など海洋系ハンター縄文人になり、
    「C2」はニューギニア人、「C4」はアボリジニになり、
    「C3」は内陸系ハンター縄文人「C3a]やネイティヴ・アメリカン「C3b」や
       中央アジア最大の遺伝子ジンギスカン系「C3c]等になった。
・極東組(Y-DNA「O」)が分化したのは42000年前ごろのようだ。
=========================================
Nature Volume:538, Pages:238-242 Date published:(13 October 2016) DOI:doi:10.1038/nature19792
「Genomic analyses inform on migration events during the peopling of Eurasia」

Abstract
  High-coverage whole-genome sequence studies have so far focused on a limited number1 of geographically restricted populations or been targeted at specific diseases, such as cancer. Nevertheless, the availability of high-resolution genomic data has led to the development of new methodologies for inferring population history and refuelled the debate on the mutation rate in humans. Here we present the Estonian Biocentre Human Genome Diversity Panel (EGDP), a dataset of 483 high-coverage human genomes from 148 populations worldwide, including 379 new genomes from 125 populations, which we group into diversity and selection sets. We analyse this dataset to refine estimates of continent-wide patterns of heterozygosity, long- and short-distance gene flow, archaic admixture, and changes in effective population size through time as well as for signals of positive or balancing selection. We find a genetic signature in present-day Papuans that suggests that at least 2% of their genome originates from an early and largely extinct expansion of anatomically modern humans (AMHs) out of Africa. Together with evidence from the western Asian fossil record11, and admixture between AMHs and Neanderthals predating the main Eurasian expansion12, our results contribute to the mounting evidence for the presence of AMHs out of Africa earlier than 75,000 years ago.


  全部ゲノム配列の研究は、ここまで地理的に制限された集団の限られた人数に集中したか、特異的疾患(例えばガン)に 目標が定められていました。 "それでも、高分解能のゲノム・データが手に入ったことは、住民の歴史を推論するための新しい方法論の開発に至って、 人類の突然変異速度についての議論を加速させました。 " "ここでは、我々はエストニアのBiocentre Human Genome Diversity Panel(EGDP)を示します。 そして世界中の148人からの483の良質なヒトゲノムのデータセットがあります。 それは、125人から379の新しいゲノムを含んでいます。そして、それを我々は多様性と選択セットに分類しました。 " 我々はこのデータセットを、異種の接合性や長距離と近距離の遺伝子拡散、古い交配物と、 時間と同様に前向きかバランスをとるための選択のサインを通した人口サイズの 変化サインなどを、大陸単位のパターンで推定することの精度を上げるために分析します。 現代パプア人のゲノムの少なくとも2%が、解剖学的現代人(AMHs)(現生人類:ホモサピエンス)より早く 出アフリカし拡大した途絶えた系統に起源をもつことを示す遺伝子のサインを発見しました。 西アジアの化石の記録からの証拠と、主要なユーラシア拡大に先行しているAMHsとネアンデルタール人の交配物と共に、 我々の結果は、75000年前より以前にAMHsが出アフリカした証拠に貢献します。

  この図では、ネアンデルタール人とデニソワ人がホモサピエンスに遺伝子を残しているが、 ネアンデルタール人は全ての出アフリカ組に遺伝子を残したのに対し デニソワ人はアボリジニとニューギニア人の旧サフール大陸組など限られた範囲に遺伝子を残したようだ。
==========================================
Nature Volume:538, Pages:201-2062 Date published:(13 October 2016) DOI:doi:10.1038/nature18964
「The Simons Genome Diversity Project: 300 genomes from 142 diverse populations」

Abstract
  Here we report the Simons Genome Diversity Project data set: high quality genomes from 300 individuals from 142 diverse populations. These genomes include at least 5.8 million base pairs that are not present in the human reference genome. Our analysis reveals key features of the landscape of human genome variation, including that the rate of accumulation of mutations has accelerated by about 5% in non-Africans compared to Africans since divergence. We show that the ancestors of some pairs of present-day human populations were substantially separated by 100,000 years ago, well before the archaeologically attested onset of behavioural modernity. We also demonstrate that indigenous Australians, New Guineans and Andamanese do not derive substantial ancestry from an early dispersal of modern humans; instead, their modern human ancestry is consistent with coming from the same source as that of other non-Africans.


  ここでは、我々はサイモンのGenome Diversity Projectデータセットを報告します:それは142の多様な集団から得た 300人の個体の高品質ゲノムです。これらのゲノムは、ヒト参照ゲノムに存在しない少なくとも580万の塩基対を含みます。 我々の分析はヒトゲノム変化の見通しの鍵となる特徴を明らかにし、それをは突然変異の蓄積の速度が分化(出アフリカ)以来 アフリカ人と比較して非アフリカ人ではおよそ5%加速されたことを含みます。 我々は、現生人類の何組かのペアの先祖が100,000年前頃、行動に関する現代性の兆候が考古学的に十分に証明された年代よりも前に、 事実上分離したことを示します。 "我々はさらに、オーストラリア・アボリジニ、ニューギニア人とアンダマン島民は、 現生人類のより初期の拡散に実施的な祖先を得ていないことも証明します; そうではなく、彼らの現生人類としての祖先は他の非アフリカ人と同じ人類集団に由来することで一致しています。"

  図cは、ネアンデルタール人遺伝子の含有率を表しているが、アフリカ以外の全ての現生人類にネアンデルタール人遺伝子が含まれ、 出アフリカ組の地中海系Y-DNA「E」とセム系Y-DNA「J」が出戻った北アフリカ(サハラ以北)も 若干のネアンデルタール人遺伝子がみられるが、サハラ以南では見られない。 このことからホモサピエンスとネアンデルタール人の交配は出アフリカ後であることを裏付けているようだ。

  図dは、デニソワ人遺伝子の含有率を表しているが、インド亜大陸と東南アジアに若干の遺伝子が残っているが、 旧サフール大陸の住人になるニューギニア人とアボリジニに5%程度の遺伝子が含まれることが分かった。 シベリアで発掘されたデニソワ人が、どこでどうやって現生人類と交配し何故一部がサフール大陸まで移動したのか? 縄文人を形成したY-DNA「C1a」と「C3a」にはデニソワ人の遺伝子は受け継がれていないのか?等々、 まだわかっていることは少なくこれからの研究・調査が待たれる。

  下図は、出アフリカ組には4%のネアンデルタール人遺伝子が受け継がれ、ニューギニア人とアボリジニには 更に3%のデニソワ人遺伝子が受け継がれていることを示している。 しかし上記3論文では、日本人の縄文遺伝子の1つである海洋系ハンターY-DNA「C1a」と内陸系ハンターY-DNA「C3a」に デニソワ人遺伝子が受け継がれているかはわからない。 受け継がれている可能性は充分にある。Y-DNA「C1a」/「C3a」日本人の常染色体調査が行われると興味深いのだが。

  またネアンデルタール人のシベリア型と思っていたデニソワ人は、当論文の調査ではホモエレクトスの進化形と考えているようだ。 つまり、ネアンデルタール人やホモサピエンスとは兄弟人類関係になるようだ。
ちなみに下図中の「Altai」はネアンデルタール人のアルタイ地域型、「Kostenki」はロシアのKostenki地域で発掘された石器時代の人類。
==========================================
まとめ

  出アフリカ組のホモサピエンスにネアンデルタール人の遺伝子が3%程度継承されていることは間違いないようですが、 デニソワ人の遺伝子がニューギニア人とオーストラリア・アボリジニに5%も受け継がれているとは驚きです。
ニューギニア人やオーストラリア・アボリジニと兄弟遺伝子を持つY-DNA「C」系縄文人や 中央アジアのジンギスカン系遺伝子民族にも継承されているのか? 非常に興味のあるところです。遠い昔の出来事が、子孫である現代人にかすかな影響を与えている可能性があるのは、面白い話です。
  ネアンデルタール人の記事でも触れましたが、当ガラパゴス史観はネアンデルタールの特徴形質を結構持っているので 他人事ではないですね。

以上
表紙に戻る
くりっく365とは   プロフィール  PR:無料HP  宮崎シーサイドモータースクール  請求書買取 金利 神奈川  グラフィックデザイン 専門学校  格安の20インチタイヤ  タイヤ 取り付け  タイヤ ポルテ 新品  音響 専門学校  激安中古ホイール  民泊 始め方  物流コンサルティング  TMJ投資顧問 評判  中古パーツ 買取 鈴鹿市  シアリス 評判