2-3. 日本民族mtDNAハプロタイプ頻度リスト | |
モンゴロイド人種論にはmtDNAの再調査が重要ではないかと思い、再調査を始めました。
目新しい結果があるわけではないのですが、東アジア最大のmtDNAハプロタイプと言われる「F」が日本人には意外に少ないことや、
日本人の38%を占める最大タイプの「D」がアイヌ民族や琉球列島人では15%程度しかなく、特に北琉球はY-DNAからみると本土以上の
Y-DNA「D2」なのですが基本的に同質なのに対し、女性から見た民族性では明らかに違うことが再認識できました。女性(mtDNA)は
民族性を表さないのはわかっていましたが、ここまで違うと何らかしらの解釈が必要になります。 いずれにせよ、人類の移動には ・男女セットで動く場合で、代表例は; 出アフリカ時、出シベリア時、出アジア→オセアニアなどがあります。後世、アフリカ出身者が男女セットで奴隷として アメリカ南北大陸に送り込まれ新たな遺伝子集団となり、更に日系移民も男女セットで移民・拡大しY-DNA「D2」「O2b1」の新たな 出現地となっています。中国人もかなりが北アメリカに送り込まれましたが、男女セットだったかはまだ調べていません。 アフリカンも日系人もほとんど同じ遺伝子集団内で交配を行うため、欧州系の遺伝子との交配はまだまだ進んでいないようです。 新たな遺伝子集団ができるまでは時間がかかりそうです。 欧州人による北アメリカの征服も清教徒は男女セットで移住したようです。現地のネイティヴ・アメリカンはタスマニア人の ように絶滅はしませんでしたが、かなり長い虐げられてきました。やはり他の遺伝子との交配はまだまだ進んでいないようです。 ・男性のみが動く場合はほとんど戦争・侵略・侵攻です 残念ながら歴史がある程度伝えられる時代になると、戦争による領土拡大が広がり、人の移動はほとんど男性つまりY-DNAのみが 動くようになりました。 移動したY-DNAは現地のmtDNAと交配するため、新たな遺伝子集団ができますが、民族としては征服・侵略したY-DNAの民族名が残る場合が 多いのです。 現地のY-DNAは消える運命が多いのです。しかし蒙古帝国など大帝国は征服者の人口制限や政策として現地集団を使ったため、 現地の遺伝子は維持され、征服者と現地女性との新たな遺伝子集団が加わります。イスラム教の征服帝国も同様なので現地の 遺伝子集団は維持されてきているようです。 中南米はポルトガル人やスペイン人が先住民のネイティヴ・アメリカンの女性と交配を進めたため、南米人つまりインディオの Y-DNAは見事に欧州人のハプロタイプのみだそうです。 先住民のY-DNAはほとんど先住民の中のみでしか見られないようです。これはこれで先住民のY-DNAは殲滅されずに残ったので 良かったのかもしれません。 変な話ですが、もし征服者が地中海系の褐色肌のポルトガルやスペイン人ではなく、ノルマン系やゲルマン系などの北ヨーロッパ系の 白肌人だったら現地のmtDNAと交配したでしょうか? かなり疑問ですが、済んだことなので単なる想像ですが、遺伝子の歴史は変わったかもしれませんね。 ・女性のみが動く場合 前にも書きましたが、国・国民の意識がしっかりと根付いた現代では想像できないほど女性は集団を越えて動いて行ったようです。 最も大きな原動力は古代から知られていたかもしれない近親婚による遺伝子疾患病を防ぐためだったと思われます。アマゾンの先住民も 他の集団から嫁入りしてくるそうです。 そうは言っても集団自身が小さいため何代も経れば集団同士が遺伝的に近くなってしまうはずですが.... そうして、先住民はエネルギーを失いひっそりと消滅して行くのです。 新聞にも出ましたが、2011/6/2号のNatureの記事で180万年前頃の南アフリカの洞窟で猿人アウストラロピテクス・アフリカヌスと パラントロプス・ロブストスの系19体の化石の歯に 残っているストロンチウムの同位体解析を行ったところ、男性らしい9体の歯は発掘された洞窟周辺の特徴があり、 女性とみられる歯の半数以上に離れた地域の特徴があったそうです。 歯に含まれるストロンチウムはエナメル質ができる子供のころに育った土地の食べ物の影響を受けることがわかっているのだそうです。 つまり180万年前の猿人はチンパンジーと同じく女性が群れを離れ別の群れに嫁入りする習慣が既にできていた、ということがわかったようなのです。 この行動はゴリラでは見られず、人類と共通の祖先から分かれたチンパンジーと人類のみに見られる行動様式なのだそうです。 この時代に近親婚の遺伝的な障害のことはわかっていたはずもないので、まだ小さな集団だったので婚期の相手が集団の中にはおらず、 外から迎え入れるのが種の保存のうえで当然のことだったからなのでしょう。どうやら女性が民族を越えて動くのは、集団が小さく メンバー全員が親戚縁者の集団で、外から嫁を迎えるしかなかった時代の名残のようです。それが今でもアマゾンの小集団の先住民に まだ生きるための風習として残っているのです。 それはさておき、Y-DNA「D*」のアンダマン諸島のOnge族やJarawa族が、今後も集団を維持できることを期待したいのですが、 多様な遺伝子集団にならないと厳しいです。 Onge族のmtDNAは「M31」だそうです。Jarawa族はわかりませんが、アンダマン諸島には「M32」もあるそうですが、姉妹遺伝子タイプなので 多様性には遠いようです。 以上 表紙に戻る |
極めて面白い研究報告がありました。早稲田大学の修士論文ですが、オリンピック出場経験のある日本人アスリート141人のうち
ハプロタイプが判明した139人を持久力競技系と瞬発力競技系に分けて調べたところ、違いが出たそうなのです。 ・持久力競技系 mtDNA「G」系は15.2%、一般日本人の7.1%の2倍、瞬発力系は1.7%で1/9しかない。これは驚くべきことです。特に「G1」は日本人と アイヌ民族が最も高いのだそうです。 mtDNA「G」はmtDNA「M12」の子タイプで「M」系なのです。縄文系(特にY-DNA「D2」)のパートナーと考えられているmtDNA「M」系は 持久力があり我慢強いのです。地道に努力するのです。 「想像するちから」や「捕食者なき世界」風に考えると、現在のアフリカでコイサン族の狩りは狙った獲物をとことん追い詰めて 100kmでも平気で追い詰め 動物が疲れて動けなくなったところを棍棒や石で殴るのですが、初期の猿人のこの長距離を歩きながら走りながら追いかける 長距離ランナー能力はまさにニ本足歩行になった人類が身に付けた能力なのだそうです。つまり持久力があるのは人類本来の能力なのです。 人間は誰もがもともと長距離ランナーの素質を持っているのですが、mtDNA「G」ハプロタイプを持つ個体は特にその能力が高いのかもしれません。 となると「G5」が70%も占めるItelmen人やアリュート人などの古住シベリヤ系の集団は持久力系の運動に最適かもしれませんね! ・瞬発力競技系 mtDNA「F」は15%で、一般日本人の約3倍、持久力系の2倍あります。アメリカには移動しなかった遺伝子集団で、 東アジア・東南アジアに多い遺伝子です。ニコバル諸島では50%にもなるそうです。 mtDNA「B」も15%で、一般日本人よりやや高めだが、持久力系の2.5倍あります。「B」は氷結のベーリング海峡を横断し アメリカ大陸に渡った「A」「B」「C」「D」「X」の中の1つなのです。 「B2」がネイティブアメリカンに見つかります。もともとはシベリヤからポリネシアまで東ユーラシア大陸とオセアニアに 広く分布しています。 mtDNA「F」も「B」も「N」の子タイプ「R」系なのです「N」はY-DNA「C」系つまり石器/縄文系「C」と弥生系「O」のパートナーと 推測されています。 この結果はオリンピック選手というエリートアスリートの調査結果なので重みがあります。素質があるかないか、 という判断にはある程度有効かもしれません。 ●持久力系競技でより力を発揮するのは、縄文系集団のパートナーと考えられているmtDNA「M」系のようです。日本人では特に 「M12」「G」系が有望でしょう。 ●一方、瞬発系競技でより力を発揮しそうなのは弥生系集団のパートナーと考えられているmtDNA「N」系のようです。特に 「R9」「R11」系が有望なようです。 スポーツ界では有酸素系の運動能力は父親より母親の影響を受ける、との報告があるようですが、これは非常に当たり前のことです。 人体でエネルギーを生産しているのは古代に細胞と「共生」したミトコンドリア(植物では葉緑体)ですが、 ミトコンドリアのDNAつまりmtDNAは母親からのみ受け継がれるのでミトコンドリアの性質は母親からのみ遺伝します。 従って父親が優秀な持久力系アスリートでも子供は関係ないのは当然なのです。母親が優秀な持久力系アスリートの場合のみ子供も 優秀な持久力系アスリートになれる素質を持つのです。 と言うわけで、スポーツ選手はmtDNA遺伝子検査をすると、持久力系競技に対する素質の有無はある程度見極めがつきそうです。 しかしそれ以上に大事なのは地道な人一倍の努力ですが! 音楽のセンス、踊りのセンス、仕事のセンスなど適材適所・向き不向きがmtDNAでわかると職業に就くと長続きするかもしれませんが、 mtDNAはエネルギー生産の標識なので、踊り続ける力や楽器や太鼓を演奏し続ける能力には関係あるかもしれません。 頭脳労働仕事は?ですが、肉体労働的な仕事を続ける力は関係ありそうですね。 しかしアフリカンの遺伝子は100mもマラソンもトップです。アフリカンは出アフリカしなかった先住民のコイサン族やピグミー族などと 中東から出戻ってきたY-DNA「E」集団の交配の結果生まれたできた交配遺伝子集団です。 コイサン族の持つ持久力とY-DNA「E」のパートナーにmtDNA「N9」がいたとすれば恐らく持っていただろう瞬発力の合わせ技では ないでしょうか。だったら面白いですね! 以上 表紙に戻る |